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[台東区 訪問看護]

2023年05月10日

生成系AIとクリニカルリーズニング 〜新QC7つ道具 親和図法

 「ChatGPT」、「BingAI」、昨年後半あたりから耳にする方も多いかと思います。ご存じの通り、生成系AIです。ガバナンス上の問題点は多々あるものの、その生成物は、我々の社会に変化をもたらし始め、すでに多様な業界の有名企業でも具体的な活用方法が検討されているようです。
 生成系AIは「人間のフィードバックを学習プロセスに取り入れることで、モデルの出力をよりユーザーの意図に近づける強化学習モデル」とされ、専門家でない私なりには「ネット上の膨大なデータから得た学習結果を活用し生成するもの」と解釈しております。
 この技術が、人の命、時間、空間、そして人生を左右しかねる「医療福祉」の分野に活用できるか否かは、学習データのバイアスや知識・規則に沿わない可能性による生成物の真偽や、権利侵害、倫理観などの課題があり、現状において適用は困難な印象があるものの、一方で、我々人類が歴史において蓄積してきた膨大なデータを活用することは、今後の発展に有用なものと思われます。

 そこで、実際の運用を今後期待しつつ、当記事では生成系AIの一要素である“膨大なデータから生成”という点に着眼します。
 我々医療者がお客様に関わるにあたり「クリニカルリーズニング」を行いお客様の全体最適を図ります。そして、対象となるお客様のあらゆる情報を参照し考察します。このとき、様々な切り口から最適案を検討するので、その切り口が多ければ多いほど、いわば、元となるデータが膨大であればあるほど、解決案の精度は向上します。つまり、お客様属性を多く抽出することで、アセスメントの質、サービス有用性が向上することとなります。

 このことは、製造業の方ならご存じのことかと思われますが、定性的な品質管理の一手法である「新QC7つ道具」の「親和図法」と似ています。特に医療者には「KJ法(川喜田二郎法)」として馴染みがあるかもしれません。この手法では、第一手順で、課題に関する各データ(事実や各人の意見等)を言語データとして幅広い対象から多角的に収集します。このとき一見関連の薄いものと思われるものでさえ、有益なものとして収集します。元となるデータですので量が多い方がお客様の実態に寄り添うこととなります。
 次の手順として、集まった言語データを親和性の高いものでグループ化し、高次低次のレイヤーに整理します。ここでは、感覚的データでさえも論理的に構造化することで、品質管理だけでなく問題解決の糸口にも活用しやすくなります。
(なお、この他に連関図法や系統図法、マトリックス図法等を併用して最適解を選択していくこととなりますが、これについては別の記事を設けたいと思います。)
 つまり、収集したデータ量が多ければ多いほど課題に対する視野は広くなり、漏れ・ミスの低減、品質や問題解決案の精度向上につながることとなります。そして医療者のクリニカルリーズニングにおいて、お客様に関する情報・属性について広く多角的に勘案事項に含めることで、高品質サービスとQOL良化につながる、といえます。

 では、考慮すべきデータの“量”はどのくらいが適しているのでしょうか。
 理想を申し上げるならば“対象となる方の全人生”がよろしいのでしょうが、死後の沙汰を執り行う“十仏様”であっても一個人の人生の振り返りに三回忌までかかるほどデータ量は膨大で、クリニカルリーズニングにおいては現実的とは言えません。そこで、医療者としては、“QOL”を一つのラインとして慮ることとなります。
 例えば、侍ジャパンメンバーの源田壮亮選手。WBC2戦目で右手小指の骨折しながらも、強い意思で出場続行を選択し、その後の活躍は世界も知るところです。
 一般的に、手指の骨折については、後遺症を残さず早期の日常生活への復帰を図り、修復期においては内固定や外固定をし骨癒合のずれを回避し、さらにリハビリやテーピング、装具などのアプローチを早期に開始するのが原則です。ここで、私のような一般人であればこの原則通りに加療されるのでしょうが、源田選手には“超一流の内野手”、“WBCへの強い気概”、“栗山監督、西武球団の配慮”、“侍ジャパンの医療スタッフの高い質とサポート”という属性を持っており、出場続行しました。(他にも列挙できる属性があったかもしれませんが。)
 “治療専念”か“出場続行”かのどちらがQOLを高められたか。推測となりますが、“骨折の治療”の属性だけでなく、源田選手ならではの前述した“多くの属性”を考慮範囲とし後者を選択したことでQOLは高まったのではないかと思われます。すなわち、“膨大なデータから生成された解決策”がQOL向上策の精度向上に繋がったという点において、生成系AIの一要素と類似しているものと考えます。

 先に申し上げたガバナンス上の問題や、個々人の倫理観からくる拒否的な意見など超える壁は多々あり、何年先となるか、実現可能なのか計りかねますが、少なくともクリニカルリーズニングと生成系AIとに通ずるものがあることから、医療倫理のみならず、技術や法整備、経済効果など外部環境の変化を敏感に察知し、技術進歩に合わせた医療福祉のあり方についての視点を持っていく必要を感じております。

 最後までお読みいただきありがとうございました。(なお、当記事は人の手によるものです。)


追伸 遅ればせながら、侍ジャパンの皆様、最高でした!活力をありがとうございます!これからもご活躍を追っていきたいと思います。


(文:PT柳田)

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